日本教育で培った「道徳」を武器に。21年・12カ国を渡り歩いたパルさんの海外移住攻略

銀行員時代に貯めた100万円を握り、タイへ飛び立ってから21年。アジア・オセアニア・中南米・北欧・インド洋リゾートと、延べ12カ国を住み継ぎ、いまはモルディブとタイを行き来する2拠点ノマド生活を送っているパルさん。本記事では、海外就職のチャンスをつかむコツや、ノマドワーキングビザの活用方法、日本の「道徳」が海外で信頼を生む理由など、パルさんの実体験をもとにお届けします。

目次

ーーまず、パルさんの自己紹介をお願いします。これまでのキャリアや現在の活動について、簡単に教えていただけますか。

21年前から海外暮らしをしていて、今はスウェーデン出身の夫と一緒に、モルディブ8割・タイ2割の2拠点生活をしています。12歳の子供もいて、普段はスウェーデンの学校に通っており、学校が長期休暇のときだけ一緒に過ごしています。

海外暮らしをする前は、日本で銀行員として勤めていました。そして、100万円を貯金した段階で、円高の経済状況も相まって海外移住を決意。最初はタイに住んでダイビングインストラクターのライセンスを取得し、そのまま現地就職。そうしたら、海外生活はすごく楽しいものでした。

今では、周囲の人から「いろんな国に20年以上住んでいるのはすごい」と言われたことをきっかけに、海外移住についてのYoutube発信やコンサルタントをしています。

モルディブ

ーー海外移住をしてから、ご自身の価値観などにおいて、日本にいたときよりもどのような変化がありましたか。

日本から離れている期間が長いほど、日本はすごくいい国であることに気づき、日本人として生まれたことにすごく誇りを感じます。まず、治安のよさや、教育が当たり前にある環境というのは、世界から見たらめずらしいです。

たとえば、電車の中に所持品を忘れても高い確率で返ってきます。会釈をしたら会釈を返す、買い物時にレジに並ぶなども日本のよい特徴です。特に大震災があったときは、日本人は炊き出しや支給品の受け取りの際にしっかりと並んでいましたが、海外ではそのようなことは少ないです。

先人が築き上げてきた歴史があってこそ、このような文化や、海外からの日本への信頼があると思うので、次の世代にもしっかり引き継ぐ必要があると、海外に行ってからは切に感じています。

ーーインフレや円高の影響で、海外移住を躊躇する人は一定数いると思います。今の海外移住のしやすさについては、どのようにお考えでしょうか。

海外でも物価が高いという状況はありますが、ローカルな食事を楽しむなど、現地の人と同じような生活をすることで、生活費を安く抑えることができます。

たとえ海外で失敗したとしても、日本は再就職のための就職支援制度や保障が整っているので、帰国しやすい環境になっていると思います。東南アジアなどの国々と比べると日本の保障は手厚いので、このメリットを使わない手はないということを、この21年間で強く感じています。

また、私が海外生活を続けられた理由は、海外で現地採用されてきたことです。なので、まずは海外就職することをおすすめしています。

魚のスープ入りスティッキーライス(ラオス料理)

ーー海外就職をするには、どのような方法があるのでしょうか。

日本のエージェントに頼む方法と、「LinkedIn」という、海外就職にも強いビジネス特化型のSNSから見つける方法があります。

また、現地に実際に住みながら仕事探しをする方法もあり、こちらのほうが仕事は見つけやすいです。たとえばWebライティングやプログラマーなどで一定の収入を得ていれば、国によって必要な収入額や条件は異なりますが、1年間の「ノマドワーキングビザ」を取得できます。家族を連れていくことも可能です。

「ノマドワーキングビザ」を取得したのちに、実際に海外で暮らしながら、現地採用している人たちとコミュニケーションを取りつつ面接を受けます。合格が出たら、現地採用に切り替えるのです。今では50カ国以上で「ノマドワーキングビザ」を発行しています。200万円程度の資産証明だけ出せば、申請できる場合もあります。このように、現地に手軽に住めるビザはたくさんあります。

ーー海外移住した当初は、コミュニティがなくて人恋しくなる場合があると思います。海外移住した後に、どのように立ち回れば、その点を解決できるでしょうか。

私もはじめて海外移住としてタイに行ったときは、周囲に知人や友人がいない状況でした。しかし、当時からお酒が好きだったので、地元の人が行くようなバーに足を運んで、日本人以外の友人を作っていました。当初はタイ語や英語はまったく話せなかったのですが、お酒の力を借りつつコミュニケーションを取る努力をすると、不思議なもので意思疎通ができるようになります(笑)

また、たとえば、タイの首都バンコクやチェンマイ、マレーシアのクアラルンプールなど、大きい都市にはたいてい日本人コミュニティがあります。

セーシェル プラット島

ーー海外移住しても言語の壁にぶつかって、戸惑ってしまう人は一定数いると思います。そのような場合の解決策はありますか。

実は英語などは最初から話せなくても、ガッツさえあれば雇用する文化は、海外にはけっこうあります。しかし、日本人は「英語が喋れない」「文法が間違ってる」という理由で、完璧さを求めすぎて萎縮してしまいがちです。

でも、完璧でなくても、たとえば疑問系のときは語尾を上げるなど、最初は「出川イングリッシュ」のようなコミュニケーションでいいのです。一生懸命伝えようとする気持ちがあれば、聞き手は何を言ってるのか理解できなくても、「何かをしてもらいたいんだ」ということはわかります。

「何かをしてもらいたいんだ」ということが伝わりさえすれば、会話を拾ってくれる海外の人は多いです。これができる人は、海外就職含め、どこへ行っても通用すると思いますね。人によっては、英語圏に行ってから3カ月くらいで、ある程度の英語を話せるようになります。

また、日本人は内容がわからなくても相手に合わせて、「Aha? Yes,yes.」などと相槌を打ってしまいがちですが、そうではなくて「I’m sorry. I don’t understand. Please repeat again.(すみません、わからなかったのでもう一度言ってください)」と素直に言うことが大切です。

ドバイ旅行

ーー海外移住をするにあたって、注意したほうが良いことがあれば教えてください。

海外生活に憧れてる人は多いと思いますし、基本的には「やった方がいい」というスタンスです。

ただし、以前、お子さんもいる一家の大黒柱である人が、仕事を辞めて家も売って「海外移住したい」と相談に来られたことがありました。そのような場合、実家などがあれば別ですが、帰国することになったときに日本での住居がなくなってしまうので、考えたほうがいいかもしれません。海外移住を決意したとしても、移住前にしっかりと資産を蓄えて、先に現地での就職先を見つけておくことが大切です。

しかし、ある程度のベースが作れれば、海外に行くことによって人生が変わるチャンスはたくさんありますし、長い人生の中ですごくいい経験になると思います。

ーーこれまで多くの国に住んできた中で、特に印象に残っている国や出来事はありますか。

一番印象に残っているのは、ラオスのルアンパバーンという、世界遺産にも登録されている街です。私と夫はダイビングをしているので、海のある地域を旅行することが多かったのですが、ラオスは海に面していない国でした。

最初はどこに魅力があるかがわからず、社会主義で怖い面もあるのだろうと考えていました。しかし実際は、国民の人柄はとても温厚で、物価も安く、日本人の口に合うお粥や麺類などの食事も多くありました。

ラオス・ルアンパバーンにあるホテル

週末になると村人たちは集まって、女性たちは織物をしながら「ビアラオ(Beerlao)」というとても美味しいビールを飲んで、曲に合わせて踊り出します。ギスギスした雰囲気はなく、素朴で昔ながらの良さがありました。

また、日本では義務教育が当たり前のようにありますが、ラオスでは当たり前ではありません。もちろん公立学校はありますが、学校に通えない距離に住んでいる子どもがたくさんいるのです。

ラオスのルアンパバーンの孤児院には、両親が養えなくて預けている、500人くらいの子どもたちがいます。しかし、そのことを卑下するわけでもなく、お互いが支え合って楽しそうに暮らしています。生活ができていること、ご飯が食べられることへの感謝を思い出し、人として生きていることがどんなに素晴らしいかを教えてもらいました。

ーー最後に、海外移住を検討している人に対して、伝えたいことはありますか。

「日本人はすごい」ということを伝えたいです。30年間の停滞や増税、130万円の壁といった暗めの話題が続く中でも、日本という国には、世界でもまれな安定した歴史があります。たとえば、日本の天皇制は1300年以上にわたって同じ王朝が続いていて、世界でも類を見ません。各国の王室イベントや儀式においても、日本の天皇陛下はとても高い格式をもって迎えられることが多いです。

このように歴史的な部分での風格があり、その体制を継続できている日本人は、世界から見てもまれな国民性があります。

また、日本の教育では学問を教えるだけではなく、「道徳」として、根本的な人としての在り方を教えます。たとえば、日本の学校では必ず、掃除や給食当番を学生にさせます。しかし、海外の多くの学校では、業者に依頼しています。なので、カレーなどをクラスの人数を考えてわけ与える、といった教育を海外ではあまりしないのです。

このように、日本人は幼いころから、自分たちが使ったものや場所をきれいにするという教育を受けています。スポーツ観戦した後、日本人がいた席はきれいで喜ばれる、ということが話題になることがあると思いますが、おそらく自然に出てしまうんですよね。頭がいいとかではなくて、礼儀正しくて厳か。

そのようなところが日本人は素晴らしいと思います。だから海外に行って働いた場合、普通に働いているだけなのに評価される人が多いですね。いつも時間通りに出勤するだけで「すごい」と言われます。

セーシェル
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