SEでなくても、IT導入は牽引できる――現場主導の社内DX

SEとしてコードを書かずとも、ITの豊富な知見と実業務の経験を土台にして、社内DXを牽引しているまめめさん。

「ITの何でも屋さん」として、これまでRPA・クラウドPBX・ノーコードツールの導入やペーパーレス化などにおいて、企画からリリースの全行程を旗振りされました。RPA導入では、会社全体の受発注業務の時間を60%減らすことに成功。

この記事では、DXの進め方や社内への定着化について、まめめさんのユニークな実例とともに解説します。

目次

――まずは、まめめさんのこれまでのキャリアを教えてください。

今は「ITの何でも屋」として、社内のあらゆるITに関わっています。ITに興味を持ったのは、25年ほど前に職業訓練でPCやITについて学んだことがきっかけです。

前職で20年ほど勤めていた50人規模のアパレルメーカーでは、システム部門がなく、当時の上司がシステム管理を兼任していました。しかし、その上司が転籍することになり、後任として私が指名されて、管理を引き継ぐことになりました。

当時はIT知識が多くなかったので、ベンダーからいろいろと教えてもらい、社内で使っているシステムに対しての知識を増やしました。すると、社員からのITやシステムに関しての全般的な相談が、全て私に来るようになったんです。社内のIT情報が全て集まるので、知識を習得するスピードが2倍・3倍に増えました。

現在勤めている100人規模のアパレル商社では、入社当初は生産・購買管理を担当していました。しかし、旧態依然の仕組みで業務が進められていたために、「どうにかしたい」と考え、ITを用いた解決策を経営層に提案したところ、すぐに採用されました。

しかし、提案した内容のボリュームが大きいために、専任が必要という話になったんです。そこで、私が社内のITに携わる専任になりました。すると、前職と同じく、「選任の人=システムに詳しい人」と社員から認知され、ITについての相談を聞く立場になりました。

とはいえ、プログラムを書けるわけではなく、幅広いIT知識や実業務の経験を基に、主にシステム企画や導入の旗振りをしています。

――前職では、RPA導入やペーパーレス推進、クラウドPBXの導入などを担当されていました。はじめに、RPA導入において、導入対象のセクションや、導入を進めるときに工夫したポイントを教えてください。

RPAは主に、伝票処理などに伴うデータ入力・加工・転記の作業に対して導入しました。導入したのは、コロナ禍になって在宅スタッフが増えたことが理由です。「出社して対応していた業務を、在宅でどう対応するか?」が主題でした。ちょうどその頃、展示会などに行っていたので、「RPAの活用が効果的かもしれない」と思ったんです。

ただし、RPAはトップダウンで「使ってください」と言っても、おそらく使われないと思いました。かつ、もしRPAのシナリオ作成をメーカーに依頼した場合、業務フローの変更が発生したときに、毎回作り替えを依頼しなければならず、コストがかかります。

そこでまずは、RPAに興味がある人を社内募集したんです。そうしたら、5人が手を上げてくれて、その5人で非公式に”RPA部”を立ち上げました。また、「必ず導入にこぎつけます」と上層部には約束したうえで、通常、デモの期間は1カ月程度のところを2カ月に延ばしてもらいました。

その後、少人数で試行錯誤した結果、本格導入できることに。その頃には、RPA部の部員は10人に増えていました。RPA自体は、『ロボパットDX』という、UIが親切で直感的に使えるものを導入しました。UiPathなどの有名なRPAも検討しましたが、ITリテラシーがないと使いにくいと思ったのです。

導入期間中には、「このように自動で動くんですよ」と社内で実演もしました。すると、興味を持つ社員が徐々に増え、最終的にはほとんどの社員がRPAに触れる環境ができて、定着化しました。ちなみにRPA導入では、”私はRPAに一切触れていない”というオチがあります(笑)

――実作業は他の部員に任せて、まめめさんは旗振りのみしていたのでしょうか?

そうです。ひたすら人がやっていることを見届けていました。これまでは、私が率先してシステムに触れていたのですが、今回同じことをしてしまうと、のめり込みすぎて旗振りができなくなってしまうと思ったんです。部員にはあえて「自分はやらないから、とにかく触ってみて」と伝えていました。ただし、不明点は一緒に考え、メーカー側にも一緒に聞きに行くというフォローには徹しました。

結果として、導入時のリーダーを務めた社員が”RPAで困ったときの指導役”としても育ったので、一石二鳥の導入効果があったと思います。

――RPAの導入の提案と予算取りは、どのように進めましたか?

予算取りをするときにはRPA部のメンバーと一緒になって、人件費換算したうえでの一月あたりの費用対効果や、シナリオ数を資料にまとめて、経営層に提出しました。会社全体としても残業を減らそうとする流れがあったので、”減らせる残業時間”も数値化して資料に入れました。

――次に、フリーアドレス化に伴う、クラウドPBXの導入とペーパーレス化について、教えてください。

フリーアドレス自体は、経営層の意向で導入されました。そこでネックになったのが電話の取り次ぎです。今までは自席にある内線電話からすぐに電話に出られましたが、フリーアドレスだと不可能です。最初のうちは、対象の人を叫んで呼んでいました(笑)

それからコロナ禍に入り、今度は在宅勤務が始まりました。会社にいない状態で取り次ぎするには、一旦電話を切ってから折り返す必要があり、コミュニケーションコストがとてもかかっていました。そこで、”在宅でも取り次ぎできる方法”を検討した結果、クラウドPBXを導入することに決めたのです。

ペーパーレス化は、フリーアドレスになったのと同時期に進めました。ペーパレス化の導入前は、受発注処理などにおいて、まだFAXの利用が主流でした。しかも1日に100枚ぐらいFAXが自社に届き、処理担当が6人もいたんです。

紙面を担当者の机の上に置いていく作業も発生していましたが、フリーアドレスになると、誰がどこにいるかもわかりません。そこで、「DocuWorks」というソフトを導入して、FAXで届いた情報を電子化して処理できるようにしました。自社側では電子化された状態で作業できますが、顧客側にはこれまで通り紙のFAXで情報が届きます。顧客側に「電子化してください」と依頼する必要もありませんでした。

社内からの反応として、クラウドPBX導入とペーパーレス化のどちらも、導入時には反発がありました。しかし2カ月もすると、「以前よりも今のほうがいい」と言われるようになりました。

――DXを進めるうえで、まめめさんは「利用率・定着率が重要」という考えを持っていらっしゃいます。その考え方に至った背景は何ですか?

ITに携わった当初は、効率化だけを目的にしていました。「これを導入したら、こんなに効率化できますよ」と会社に提案していたんです。しかし、当時の社長からは「効率化できるのはわかったけど、それでどうなるの?」と言われて、答えをすぐに出せませんでした。

それからは、“効率化する目的”を少しずつ意識するようになりました。例えば、効率化すると、工数に余裕が出た社員は、もっと重要度の高い仕事ができるようになります。

前職では、「このセクションにシステム導入したら、これだけ時間削減効果があります。すると、今担当している社員の仕事はなくなるので、こっちの部署に異動してもらえば、営業面の問題を解決できるのではないでしょうか?」というような提案はよくしていました。今でも、なるべく効率化自体を目的とせず手段として捉えて、提案するようにしています。

――RPAやペーパーレスを導入した後の、経営者や社員の反応を教えてください。

経営層からは残業時間の削減で好評で、社員側からは、「良い」「悪い」のどちらとも言われませんでした。私としては「何も言われない」ということ自体が、よくなった結果に対しての証左だと思っています。

導入時は、現場社員へのケアもできる限りしていました。導入後に失敗するケースとして、現場からの文句がたくさん出て、「導入したのに結局使われない」ということがあります。そうならないように、前もって現場側には、導入したらできること・できないことを極力リアルに伝えて、利用するときのイメージを持ってもらうようにしていました。

導入前後のイメージの差をなるべく少なくすれば、不満は出ない――というのが私の持論です。

――現職のアパレル商社では、ノーコードツールの導入を進行されています。導入前の状態や、どのように進めているのかを教えてください。

導入前は生産管理にシステムを利用せず、全てExcelで作業していて、VBAも組んでいませんでした。セクションごとに独立したExcelを使っていたので、転記作業も発生し、どう見ても非効率な状態でした。

社員にヒアリングすると、「このままでは無駄だと思いながらも、よくする方法がわからない」という声が多かったんです。であれば”システム化することで、事務作業をとにかく減らして時間を生む”ことを全面的に推して、会社からはすんなりと採用されました。

導入を進めているノーコードツールは『@pocket』というもので、購買管理システムとして利用予定です。『@pocket』にした理由として、まず圧倒的なコストの安さがあります。加えて、同メーカーのグループウェアをグループ会社ですでに利用していたので、セキュリティチェックの時間も削減することができます。

Excelからの発注書作成や紙への出力、履歴管理、他部署への連携などを『@pocket』で一元化し、重複作業もなくなるようにします。シンプルで使いやすい仕組みになるので、社員には喜んでもらえると思います。

『@pocket』はコストがかなり低いぶん、機能制限が多いです。しかし、最初はとにかく低コストからスタートし、”システムに入力するということに慣れてもらう”ことが先決だと判断しました。システムの利用に慣れていない社員が多いので、最初から例えば「月額50万円かかります」「Salesforce(CRM)を入れましょう」と言っても、誰も扱えず、お金だけがかかってしまいます。そのような事態は避けたいと考えました。

――とても大事な観点だと思いました。Excelのみの利用経験だと、入力時に自由度が高いから、「入力項目に制限があるシステムを使う必要あるのか」という意見に傾いてしまう。そのような業務側の意見に耳を傾けすぎて、既存の業務フローに合わせて、コストをかけて複雑なカスタマイズ開発をする会社もあります。そうならないためにも、まずは手頃なノーコードツールでシステムに慣れてもらう、ということですね。

そうですね。利用者側のレベル感に合わせるのは重要だと思っています。現在導入を進めている『@pocket』は、機能は少ないので、利用できる期間はせいぜい2〜3年程度です。そして、2〜3年後には、社員のITリテラシーがワンランク上がり、“少しITを使える人たち”になっている見込みです。そうなってから初めて、標準的なシステムを利用できると考えています。このように、あえてワンクッションを入れるイメージで導入を進めています。

ただし、『@pocket』を導入して1年くらいすると、どのみち機能を付け足す必要が出てきます。そのタイミングで、「社内のITリテラシーがどの程度上がったか」の検証を一度したいと考えています。

――最後に、社内でシステム導入やIT教育を担当している人に向けて、メッセージをお願いします。

何かの試みをするときに、以前の私がそうでしたが、多くの人は「100点を取らなくては」と考えがちです。でも、例えば社員が100人いたとして、100人全員が「いいね」と言ってくれることなんて、おそらくありません。むしろ、70〜80%くらいの人が喜んでくれれば十分です。

残りの20〜30%の人に対しても、「この部分は確かに今までより不便になっています。でも、このような点はよくなっていませんか?」と話をすれば、ある程度納得してくれます。

反対意見に対しての切り返しの内容は、実際に自分が実務を経験している場合であれば、「この業務ではこう変えられますよね」と具体的に話せます。導入時においても、“利用者の代弁をする気持ちで提案を進める”ことが大切だと思っています。

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