「子どものしあわせは、大人が満たされることから始まる」子育て世代を支え、新しいつながりを生み出す『cafe ちいさなせかい』

福岡県北九州市にある『cafe ちいさなせかい』は、単なるカフェレストランではなく、子育て中のママパパが心からリラックスできる場所を提供している。保育スペースを併設し、子どもを安心して預けながら温かい食事を楽しめるサービスが特徴だ。

経営するのは、保育士や調理師として長年経験を積んできた内野夫妻。子育ての相談に応じたり、保育士の転職支援をしたりと、「人と人のつながり」が生まれる場を大切にしている。さらに、『SASSEN(デジタルチャンバラスポーツ)』のインストラクターやシンガーとしての活動もしており、地域で新たなつながりを生み出している。

「子どもを幸せにするには、まず大人が満たされることが大切」。そんな想いを軸にした活動について、内野こうた氏に話をうかがった。

目次

ーーまずは、簡単に自己紹介と現在取り組んでいることを教えてください。

短期大学の保育学科に通ったのち、認可保育園でクラス担任を10年、企業主導型保育園で施設長として2年勤務しました。その後独立して、現在は福岡県北九州市で『cafe ちいさなせかい』というカフェレストランを、調理師の妻と保育士のわたしで経営しています。

『cafe ちいさなせかい』1F テーブル席

ーー今でこそ『cafe ちいさなせかい』を経営されていますが、もともと保育士を目指したきっかけは何ですか?

もともと中学生や高校生のときに、人に何か聞かれたら答えたり、勉強を教えたりすることが好きだったので、将来の仕事としてぼんやりと「学校の先生もいいな」という思いがありました。

しかし、教師になるために国公立大学の教育学部に行くにしても、わたしが通っていた商業高校では専門科目が中心だったので、共通テスト(旧センター試験)の対策をするようなカリキュラムは十分ではありませんでした。

これから対策するのもどうなのかと悩んでいたときに、当時の商業高校の担任の先生が、「保育士」という選択肢を教えてくれたのです。「先生という立場は、本当に人の人生を変えるんだな」とそのときに思ったのを、今でも覚えています。

ーー保育スペース併設のカフェレストランというスタイルにしたきっかけや、保育士の経験をどのように活かしているかを教えてください。

わたし自身も子育ての経験があるのですが、子育て中はゆっくり食事を取ることすらままなりません。楽をするために外食に行ったのに、結局子どもにごはんを食べさせることに時間がかかり、注文した料理を温かいうちに食べられない、といったことが少なくないのです。そこで、「だれかに子どもを預けて、ご飯ぐらいゆっくり食べたい」という子育て中のママパパの願いを叶えるために、『cafe ちいさなせかい』をつくりました。

わたしは保育士の経験が長いので、お食事に来られたついでに、子育ての悩みの相談にも乗っています。保育施設の管理職の経験もあるので、保育士や幼稚園教諭など、現場での悩みについて相談に来る人も多くいらっしゃいます。また、飲食店をしていると周囲の保育施設の情報が入ってくるので、保育士の転職先の相談に乗ることもあります。これまでの保育士と管理職の経験を活かして、子どもに関わっているさまざまな人の相談に乗っている感じになっていますね。

『cafe ちいさなせかい』保育スペース

ーーお客様からの反響や喜ばれた声として、印象に残っているエピソードを教えてください。

「こんなにゆっくり食べたのは久しぶり」と言われたり、ママ友同士のご来店で「友達とこんなにゆっくり話したのはいつぶりだろう」といった声を聞くと、とてもうれしくなります。創業のきっかけと今のお店の状況が一致しているので、一定数のニーズがあったということも実感しています。

また、10年以上前に先生として関わった卒園児が来店して、「先生とやったサッカーが楽しかったのでサッカー部に入りました」と言われたことがあります。そのときには感動して、心の中で号泣しました(笑)

ーー『cafe ちいさなせかい』に来店してから、実際に状況が好転した人がいたら教えていただけますか?

もともとはお客様として来店していた、3人の子どもを子育て中の当店のスタッフがいます。最初に来店したときには、3人目の妊娠中にいろいろ悩んでいたみたいで、人生相談のような感じで「本当にこのお店に来て感動しました。わたしもご主人や奥様みたいに何かしたいと思うのですが、何から始めればいいのでしょうか?」と聞かれました。そこで、わたしは「考えている時間がもったいないので、とにかく何かしてください」と答えたんですよ。

『cafe ちいさなせかい』ラテアート

その言葉に本人はぐっときたみたいで、それから1週間後には、とあるワークショップが開催できる民間資格を取りに行っていました。その後、たまたま当店でスタッフの求人を出したら、すぐに応募してくれて、今では週2,3回のペースで一緒に働いています。副業のワークショップのほうは、1年間で確定申告しないといけないレベルまでになったようです。子育てについて悩みがあるときは、いつでもわたしや妻に聞けるので、なんだかすごくいつも楽しいみたいです(笑)

他にも、子育てがしんどくて来店されて、わたしたちと会話を重ねるごとに、だんだんと表情が変わっていくような人は多くいらっしゃいます。

ーー『cafe ちいさなせかい』の経営以外にも、福岡県北九州市でデジタルチャンバラスポーツ『SASSEN(サッセン)』のインストラクターや、シンガー活動をされていると思います。まず、『SASSEN』の魅力や、地域との関わりについて教えていただけますか?

『SASSEN』とは、福岡県北九州市で生まれた、チャンバラとフェンシングを足したようなスポーツです。発泡ポリエチレンでできている「SASSEN刀」が対戦相手の体に当たると、専用アプリとBluetoothが連動して、自動で当たり判定が出るようになっています。子供から大人まで、合法的に人をたたけて怪我もしない、楽しいスポーツです(笑)

『SASSEN』試合の様子

防具は必要なく、「SASSEN刀」2本とiPadがあればどこでもできます。月1,2回の『SASSEN』教室では、子供はもちろん「SASSEN刀」を喜んで振り回していますが、健康目的で来る大人もいます。本当に心身ともに気持ちよく、ストレスを発散できるスポーツです。先日、北九州市で60人規模のオフ会を開いたときも、ずっとワーワーしながらたたき合ってましたね(笑)

『SASSEN』の体験教室やイベントのときは、有料でインストラクターをしているので、一つのビジネスとしても成り立っています。

ーーシンガーとしての活動についても教えてください。

もともとアニメソングやヒーローソングが好きで、2011年からシンガーとして音楽活動を始めました。福岡県北九州市にかつて存在した、テーマパーク「スペースワールド」で開催された「アニソンコンテスト2011」では優勝。福岡県北九州市で毎年開催される「わっしょい百万夏まつり」の一環として開かれたイベント「北九州アニソンコンテスト2015」では、最優秀賞を授与されました。その後、カバー曲だけでなくオリジナル曲も歌ったり、北九州市のPRアニメ『KITAKYUSHU PRIDE 十番勝負』の主題歌『The Endless Futures』を歌唱したりしています。

内野氏が音楽ライブで歌唱している様子

『cafe ちいさなせかい』や『SASSEN』、シンガーとしての音楽活動のどれもが、子どもから大人までが楽しめるという共通点があります。最近では、『SASSEN』のイベントや音楽ライブに来た人が、『cafe ちいさなせかい』にも足を運んでくれるようになって、3つがお互いに良い循環を生み出しています。

ーーSNS運用やショート動画制作に力を入れられていますが、集客面で工夫していることは何ですか?

あの手この手で『cafe ちいさなせかい』の広報活動をしていて、自分の足で歩いてチラシをポスティングしたこともあります。メインとしてはInstagramを利用していて、作った料理などをショート動画として投稿しています。フォロワー以外の人にも口コミのように広まっていくので、InstagramやTikTokを見てきました、という人が多くいらっしゃいますね。お客様も料理などの写真を撮って、メンションしてInstagramのストーリーズで紹介してくれています。

食事がおいしいお店は今ではどこにでもあるので、食事以外にも来店する動機をどうやって足していくかを普段から考えています。子育ての相談ができたり何かしらの学びがあったりなど、食事以上の価値を提供できると、来店する動機が増えて、さらにリピートにつながると思っていて、常々そこを意識してますね。

ランチ人気No.1「チキン南蛮 自家製タルタルソース添え」

また、Instagramを使いこなしたいフリーランスや副業をしている人向けに、『cafe ちいさなせかい』の店内で、月に1,2回のペースで勉強会を開催しています。勉強会ついでに食事もして喜んでくれるので、また来店いただけるきっかけにもなっています。

ーー「子どものしあわせは、大人が満たされることから始まる」をテーマにして、情報発信をしていると思います。どのようなきっかけで、そのような考えを持つようになったのでしょうか?

日本では、児童相談所に寄せられる児童虐待の相談件数が年々増えています。かつては子どもをたたくような「しつけ」をしていた風潮が一部ではありましたが、研究が進み、体罰が子どもの脳に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。 近年では虐待が発見されやすくなった一方で、ご近所付き合いが減って孤独な環境で子育てをする人が増えています。こうした要因が重なり、結果として虐待の件数が増えているのです。

そのような状況の中で、わたしがケアすべきなのは子供ではなく、大人のほうだと気付きました。大人が満たされることで、子どもへの関わり方も自然と変わっていきます。そこで、大人向けに楽しいコンテンツや、子どもへの効果的な関わり方を、SNSや実際にお会いした人に共有しています。結果的に子どもの幸せにつながり、将来的には社会に対しても良い影響をもたらすと考えています。

バレンタインシーズンの「チョコレート入りカッサータ」

ーー最後に、『cafe ちいさなせかい』の近況や、経営という観点で大切にしていることを教えてください。

当店では、カフェとしての利用はもちろんできますが、ランチのご利用が特に多いです。3階席まであるうち、休日のランチ帯では1階のテーブル席や3階のお座敷まで埋まるので、スタッフとしては、もう戦争みたいな感覚になっていますね(笑)

料理はチキン南蛮やパスタ、オムライスなどがあって、イタリア料理が好きで飲食業界歴10年以上の妻がつくっています。

経営の観点では、「他者への感謝」を忘れないように心がけています。『cafe ちいさなせかい』では、お客様に楽しんでいただけるように努めていますが、なによりも「来ていただけること自体がありがたい」という思いを大切にしています。

看板料理「お肉のラグーソース スパゲッティ」

cafe ちいさなせかい

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