「自分が本当にほしいと思うサービスを作った」50カ月以上通い続ける人が絶えないパーソナルジム

チケット制が主流のパーソナルジム業界において、「株式会社 姿勢改善工房」では、めずらしい月額定額制を導入している。同ジムは40代からの姿勢改善を目的としており、会員の平均年齢は56歳で8割が女性だ。ジムでのトレーニングだけでなく、自宅で気軽に取り組めるオンラインサービスも提供している。

今回はトレーナーだけでなく、事業者向けの集客コンサルタントとしても活躍している、姿勢改善工房 代表 尾田千尋氏に取材。ジムが流行っている理由や事業継続のポイント、今後のビジョンである「デジタルノマド生活」について話を伺った。

目次

ーーまず、現在取り組まれていることを教えてください。

トレーナーとして30年間活動しており、2010年からは札幌でパーソナルジムを経営しています。ジム経営以外にも、企業へ訪問しての指導や、健康や運動の大切さを伝える講演活動もしています。最近は事業者向けに、ビジネス立ち上げの支援をすることもあります。

また、趣味の範ちゅうですが、社会人になってから柔術を25年やっています。帯は上級者クラスの紫帯で、北海道大会で優勝したこともあります。柔術で培った体の使い方は、トレーニング指導のときにも役立つことが多いですね。

柔術北海道大会の表彰式

ーーパーソナルジムを15年間経営されていますが、独立に至った背景を教えていただけますか?

独立する前には、国内大手のスポーツクラブに勤めていました。ただ、楽しくてやりがいのあるレーナーとしての運動指導だけではなく、シフト管理や物販販売などの業務もあったのです。付帯業務をせずに、トレーナーの仕事に集中したいと考えて独立しました。また、独立したいという思いはスポーツクラブへの入社当時からずっとあって、先輩には「いずれ独立します」と宣言もしていました。

ーートレーニングジムに通っても、半年以内で退会する人が一般的には50%を超える中で、御社のパーソナルジムでは4年以上も継続して利用されている会員様がほとんどです。どのような工夫をされているのでしょうか?

一般的なトレーニングジムでは、手厚いフォローは最初の2,3回のみで、そのあとは会員が自主的にがんばるパターンがほとんどです。しかし、多くの人は運動が好きなわけではないので、モチベーションが続かずにやめてしまいます。

そこで当社のパーソナルジムでは、必ずトレーナーが会員様にマンツーマン指導し、次に何のトレーニングが必要かが常にわかっている状態をつくっています。会員様には安心していただいていて、結果的に継続率の高さにもつながっていると思います。また、日本ではめずらしい月額定額制を導入しています。月に一度のお支払いだけで、予約をすれば何度でも利用いただけるのです。

当社のトレーナーは、担当するすべての会員様の家族構成や趣味、最近のできごとを把握しているので、「自分を理解してくれている場所」と思って継続的に通っていただいている部分もあると思います。

会員様向けのアンケートでは、「自分に合わせて指導してくれる」と回答いただくことが多いです。もともと運動が苦手な人が来るので、早めに強度を上げると嫌になってしまいます。とはいえ、強度が1年前と同じでは効果が出ないので、ご本人が気づかないくらいジワジワと上げるようにしています。運動が苦手な人たちにいかに継続していただくか、を常に考えています。

ーーダイエットや姿勢改善を目標にされている会員様が多いと思いますが、特に効果があった事例や印象的なエピソードがあれば教えてください。

当ジムのプロモーション動画にも出演いただいている女性の会員様がいます。その会員様は入会当初から、「峰不二子のようになりたい」という目標を持っていました。もともときれいな人ではあったのですが、より筋肉がついて引き締まった体型になり、周囲のママ友の話題の中心になったようです。その後、その会員様から10人以上も紹介してくれました。

「変形性膝関節症」という、膝が痛くて曲がらない症状で悩んでいる、70代の介護士の会員様とセッションをしたことがあります。姿勢を改善するために、外に開いてしまっている膝を真っ直ぐにして、さらに戻りづらくするトレーニングをしました。当初は介護士をやめようかと悩んでいましたが、トレーニングをして痛みが改善されたことで、今でも現役でバリバリ働いていらっしゃいます。そのあとも、当ジムには定期的に通ってくれています。

奥さんの尾田マリナ氏が施術している様子

ーー事業をしていく中で、一番きついと感じたことや、そのときにどのように取り組まれたか教えていただけますか?

一番つらかったのは、独立してからの3年間です。スポーツクラブに勤めているときは、顧客が自然と来てくれましたが、独立してからはジムに1人の来店もない日がありました。会社員時代にはマネージャー業務を手伝っていたこともあり、事業計画書と予算表をしっかり作って売上の見込みも立てていたのですが、全くそのとおりにいかなかったのです。

家族もいて生活を維持していく必要があるので、ジムの営業時間が終わってからファミレスでバイトをしました。そのときに、高校生くらいの若いスタッフたちにどなられながら働いたことがあります。そのときのしんどい経験を、今でも夢で見るくらいに鮮明に覚えています。

地道な集客をしてなんとか売上をあげようとする中で、売上が上がっていない状況を、じつは会社員時代の元上司が気にかけてくれていました。それから、老人ホームでの健康指導などを業務委託で依頼してくれるようになり、少しずつ売上が回復していったのです。

学生向けに運動指導の講演をしている様子

開業して6年目の2016年からは、月額定額制のパーソナルトレーニングを取り入れたことで、大幅に売上を伸ばすことができました。月額定額制を取り入れるまでは、1時間枠のチケット制を採用していました。

ーーオンラインによる筋トレなど、オンラインサービスにも力を入れられていますが、始めたきっかけや意識しているポイントを教えてください。

オンラインサービスは、コロナ禍がきっかけで始めました。北海道は雪が降るので、外に出てジムに通うことが億劫になりがちです。そうなると退会につながり、会員様の健康上もよくありません。

そこで、オンラインを活用して、ご自宅でできるサーキットトレーニングを30分枠で提供しています。冬場でもご自宅でしっかりと運動できて、春になったらまたジムに来てくれるようになります。ちなみに、会員様からはオンラインレッスン代の追加料金はいただいていません。

オンラインサービスは当ジムの会員様だけではなく、外部の人に対しても提供することがあります。

ーー事業者向けに副業や起業の支援もされていますが、集客や事業継続に悩む方に対して、どのようなアドバイスをしていますか?

多くのクライアントが共通して抱える悩みは「集客」です。ただし、最初から単にSNSなどを使って集客するのではなく、ビジネスの構築のしかたからアドバイスすることが多いです。

まずはじめに、検討中のビジネスモデルに対して、「自分だったら本当に買いたいと思うか」ということを突き詰めることが大切です。自分が本当に欲しいと思うことをビジネスにするからこそ、顧客が来るようになるのです。

たとえば当社の場合、月額定額制やマンツーマン指導など、自分が欲しいと思っていたシステムを導入して顧客が来るようになっています。パーソナルトレーニングは60分で6,600円(税込)が相場です。しかし、その金額が払える人は、ある程度収入のある人に限られます。パーソナルトレーニングをあきらめて安価なスポーツジムに行ったとしても、モチベーションが維持できずに退会してしまう。そこで、月額1万5,000円(税込)はかかりますが、マンツーマン指導やオンラインレッスンが無制限、おまけに2回まで整体や美容鍼、鍼灸治療を受けられるシステムをつくりました。

テレビ北海道「DO! ろーかる(ど・ろーかる)」生出演

他にも、「とにかく稼ごう」といったような漠然とした感覚で、必要な売上と利益が明確でないままビジネスを始めようとする人がいます。そのような人には、手元に必要な利益とかかる経費を割り出して、具体的な売上目標額に落とし込んでいくようにアドバイスしています。

ーー今後の目標を教えてください。また、場所を選ばずに仕事ができる「デジタルノマド生活」を目指されていますが、そのために今は何をしていますか?

企業の従業員向けにカウンセリングやキャリアアップ支援ができるように、今はキャリアコンサルタント資格を取得するための勉強に励んでいます。キャリアコンサルタント資格を取得すれば、これまでのような経営者や個人事業主への支援だけではなく、企業全体に対して支援できるようになるためです。

また、60代で最終目標である「デジタルノマド生活」ができるように、最低限の英会話力を身につけるためにTOEFLを勉強中です。将来的には札幌のほか、実家がある福島と妻の出身のロシアの3拠点生活ができればとも考えています。現在はジムの運営による売上がほとんどです。しかし今後は、オンラインを利用したコンサルタント事業の売上を徐々に増やし、いずれはジムの運営を他の人に任せていきたいと思っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次